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MAISON CACAO FOUNDERCACAO DIRECTOR

石原 紳伍

世界のチョコレートシーンに新しい概念を届けたい

まだ見たことのない景色を見に行ったり、みんなで夢を描き続けられる——そんなブランドであることを願っています。自分の子どもや孫が、両親や祖父母の姿を見て「自分もこのブランドで働きたい」と思えるような存在。僕たちは、ただ規模を追うのではなく、永く続く物語の中で、自分たちの暮らしを豊かにしながら、世の中に圧倒的な感動を届けるチームであり続けたいと考えています。

2025年、メゾンカカオは10周年を迎えました。正直なところ、「もう10年経ったんだ!」というのが率直な感想です。これからの10年は突き抜けていきます。心躍る方にやりたいことをやり続ける10年にするつもりです。たとえば、日本の誇る寿司が世界に生魚を食べる文化を根付かせたように、生チョコレートで世界のチョコレートシーンに新しい概念を届けたい。そのために、僕たちの本拠地である鎌倉のハウスを軸としながら、海外挑戦にも踏み出していきます。パリはその候補のひとつですし、南半球、そしてアメリカも視野に入れています。

チョコレート以上に大切な“何か”を届けている

これからの10年は、メゾンカカオに加わる新しい仲間の姿もこれまでとは少しずつ変わっていくと思います。ただ、変わらないものがひとつだけあります。それはメゾンスピリットを大切に思えるかどうかです。

この10年間、自分たちなりの哲学を育んできました。決して正解が書かれた教科書ではなく、迷ったときの道しるべのような存在です。ブランドの哲学に対して、共感し、向き合い、自ら問い直し続けられるか——そこにこそ、スピリットが表れます。何よりもメゾンスピリットをベースに持ってくださる方と、一緒に歩んでいきたいですね。僕たちはチョコレートを販売させてもらっていますが、チョコレート以上に大切な“何か”を届けている、そう感じています。

おかげさまで、これまでは圧倒的に顧客視点で、ブランド愛の強い仲間が多く集まってくれました。今後もそうした方たちの存在が大切である一方、これからの10年は、各分野におけるスペシャリストの力も必要です。専門性を土台に経験を重ねてきた方を迎え入れ、より高い次元でチームを進化させていきたいと思っています。ただ、その過程でメゾンスピリットが薄れてしまうことは絶対に避けたい。これまで多くの尊敬すべき企業が領域を広げてもコアをぶらさずにいられたのは、意識と工夫の賜物。僕たちも、次世代にスピリットを継承していきたいと思っています。

スキル磨きより人磨き

これから入社してくださる方たち、そしてすでに活躍してくれているメンバーに対して、僕たちが提供できる価値とは何か。それは、生活水準を高めること以上に、「知的水準を引き上げる経験」です。

たとえば、家の中に飾るアートが変わったり、暮らしの中の選択肢——旅先、食卓、時間の使い方——に新たな視点が加わったり。日々の生活そのものが豊かになっていく実感が、ここにはあると思っています。メゾンカカオでの仕事を通じて、楽しみ方の引き出しや、自分らしい選択を広げていく審美眼が自然と手に入る、そんな環境です。

僕たちは、「スキル磨きより人磨き」という言葉をよく用います。スキルを磨けば評価が上がり、評価が上がれば金銭的な報酬が増え、その結果、生活水準が向上するかもしれません。それも大切なことですが、一方で、人間性を磨けば感性が豊かになり、他者との向き合い方が変わります。それはやがて知的水準の向上につながります。人磨きとは、「相手に真剣に向き合える人になる」ということ。単に相手のことを一番に思うだけではなく、ともに何かに取り組むとき、相手のために限界を超えた圧倒的な努力ができるかどうか——そこに人磨きの本質があります。結果として、人磨きは人生を通じた財産になるのです。

成長を支援する体制も、社内には整っています。だからこそ、「できない」「教えてほしい」と素直に助けを求められる人が強くなっていく。そういう人は、過去の自分を乗り越え、大きく変わっていきます。課題を乗り越えた人の顔つきは、まるで別人のよう。メゾンカカオは、そんな変化を後押しできる場所であり続けたいですね。

“時間と情熱のリレー”こそが最大の強み

生産者さんとのつながりにおいて、僕たちが大切にしていることは三つ。家族を何より大切にしていること、素晴らしいテロワール(土地の気候や地理的個性)を持っていること、そして圧倒的な探究心があること。ご一緒してくださる生産者さんたちは、各地のトップレベルの方々。そうした国内の生産者さんに加え、コロンビアのカカオ契約農家さんも今や2,400軒を超え、メゾンファミリーはどんどん広がっていきます。

メゾンカカオと他社さんとの違いを問われたとき、僕たちが真っ先に思い浮かべるのは、生産者の方々の存在です。365日自然と向き合い、天候の変化に翻弄されながらも果実を育ててくださるその努力は、僕たちのキッチンでの試行錯誤など比べものにならないほど、尊く、難しいものです。

食の世界では、職人の技術や受賞歴が脚光を浴びがち。でも、食材そのものが美味しければ、手を加えすぎずとも感動を届けられる。僕たちが心から信じているのは、農家さんや生産者さんがいてくださるからこそ、お客さまに心を動かす体験を届けられるということ。そして、この“時間と情熱のリレー”こそが、メゾンカカオの最大の強みだと考えています。

これから入社してくださる方にとっても、こうした価値観はきっと人生の豊かさにつながっていくはずです。だからこそ、生産現場や背景に対する深い理解を持っていてほしい。そしてもうひとつ、生産者さんとともに僕たちが目指す「新たなチョコレート文化の創造」は、たとえるなら“エベレストの頂に桜を咲かせる”くらいに難しいこと。だからこそ、アグレッシブさや挑戦心も、同じくらい大切にしていきたいと思っています。

メゾンカカオらしさとは何か

創業当時から、従業員に対する想いは何ひとつ変わっていません。自分一人ではなく、みんなとカタチにしている。本物を作り、届けるには、みんなの力が必要なんです。今ではリーダーが育ち、それぞれの持ち場で挑戦を重ねながら、自分自身を磨いてくれています。本当に頼もしい限りです。

僕たちは、「ブランドとして何を世の中に出せばワクワクするか」から出発します。お客様の顔を想像しながら、「こんな製品だったらきっとびっくりしてくれるね」「こういう表現なら生産者さんの色が伝わるね」といった会話を重ねるのです。最も大切なのは、「その製品にどんな意味と意義があるのか」。最終的なGO/STOPの判断軸も、「メゾンカカオらしいか」です。メゾンカカオらしさには、正解も完成もありません。永遠に未完成だからこそ、みんなで膝を突き合わせて語りあい、探求し続けるもの。この探求こそがメゾンカカオらしさなのかもしれません。

さいごに

僕たちは「旅」という言葉をとても大切にしています。人生を旅する。未知との出会いを通じて、これまでの経験が掛け合わさり、新たな価値が生まれる。未知に触れることで、これまで当たり前だった日常の大切さに気づくことができる。何気ない日々の中にも、旅の視点があれば、キラリと光る瞬間を見つけることができるはずです。そんなふうに、人生の豊かさを広げる旅を共に歩める仲間に出会いたいと思っています。

実は、メゾンカカオの始まりも旅をきっかけとしています。2013年、僕が初めて訪れたコロンビアのマニサレス——街中を包み込むチョコレートの香り、カカオを栽培する生産者たち、行き来するトラクター、道端で楽しそうにチョコレートドリンクを飲む人たち。今では希少ですが、生産者と生活者が当たり前のようにつながる景色を前に、「この風景のように、日常でチョコレートを楽しむ文化を日本で作りたい」と決意し、そこから今日まで続く新たな旅が始まったのです。

中には、「熱量はあるけれど、何に没頭すればいいのかまだ分からない」という方もいるかもしれません。それでも大丈夫。目的を探すこともまた、旅の始まりです。実は、メゾンカカオでは職種を問わずほとんどのメンバーが未経験からスタートしています。経験よりも「家族として迎え入れられるかどうか」が大切。家族には本気で向き合い、絶対に守り抜きたい。そう思っているからです。

この1年で入社して活躍しているメンバーには、共通点があります。それは、「大義を持っている」ということ。たとえば、「自分がどうなりたいか」よりも、「地球環境を良くしたい」「生産者さんの想いを届けたい」など、自己を超えた目的意識を持っている。そういう人たちは、入社してすぐに自分のやりがいを見つけ、熱意をもって仕事に取り組んでくれています。シンプルに言えば、僕たちは、人生という壮大なグランドプランを共に旅できる仲間を探しているのだと思います。その旅に、あなたが加わってくれることを心から願っています。

MAISON CACAO FounderCacao Director
石原 紳伍