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わたしたちが「旅するメゾン」を始めた理由

メゾンカカオにとって「旅」は特別なもの。そして、なくてはならないものでもある。旅は視野を広げ、価値観を多様にしてくれる。それは人にとってだけでなく、ブランドにとっても同様。そのような旅への想いを具体的な取り組みにしたのが「旅するメゾン」だ。

パンデミックがもたらしたもの

2020年、新型コロナウイルス感染症が世界規模で広がった。海外への渡航を制限される状況は、旅をクリエイションの源と捉えるメゾンカカオにとって翼を奪われたにも等しい。しかし、代表の石原紳伍はその状況に活路を見出す。「一見逆境に見えてもその中には必ずチャンスの芽がある。先の見えない状況に不安を感じるのではなく、むしろ楽しむのが僕たちのやり方なんです」。すぐさま視線を国内へ向け、日本各地の生産者を巡る「旅するメゾン」を企画する。メゾンカカオの「アロマ生チョコレート」は果実やナッツなど、さまざまな素材をチョコレートと掛け合わせることで多彩な味を表現するブランドを代表する製品。そこで、日本各地の果樹園や畑を訪ね、生産者との絆と素材への理解を深めながら、その行程そのものを「旅」として、楽しんでしまおうというのが「旅するメゾン」が意図するものだ。四季折々の最高の素材を求めて、ピンポイントで生産者を訪ねる「旅するメゾン」がこうして始まった。

生産者との共創関係

「旅するメゾン」では生産者のもとへ実際に足を運ぶ。そこがどんなに遠くても、どんなに時間がかかっても、直接会いに行くことを信条としている。スマートフォンが一台あれば、その場にいながら世界中の情報が手に入る時代に、なぜわざわざ足を運ぶのか。「その土地の風景を見て、その土地の空気を感じ、その土地の文化に触れる。それは現地に足を運ばなければけっして体験できないことです」。現地に赴き、生産者と対話し、苦労も喜びも肌で感じることで、素材に備わるストーリーを知る。そして、そのストーリーを共有することで、メゾンカカオのものづくりは生産者との「共創」になる。どんなスイーツも生産者の存在なしに生み出すことはできないというあたりまえの事実をあらためて胸に刻むのが「旅するメゾン」の真価である。また、「旅するメゾン」では一度訪れた生産者のもとを再び訪問することがあるという。「完成した製品を持って生産者に会いに行くんです。自分たちで届けに行くのは、生産者の苦労や情熱が製品という形になったことを直接ご覧に入れたいから。僕たちにとって生産者の方々もメゾンの一員。そのようにしてメゾンの輪を深くすることが僕たちの哲学といえます」。

旅の先に見ているもの

じつは生産者との共創とは別の想いも「旅するメゾン」にはある。それは、日本各地の農産物や食材をチョコレートやスイーツ、あるいは料理という形に変えて、ひとりでも多くの人々に紹介すること。東西南北に長い弓なりの列島である日本は四季の変化に富み、地域ごとに豊かな食材に恵まれる。地方の特産品を紹介することで、メゾンカカオのお客様に新たな驚きを届け、それが地域の生産者の応援にもつながる。そして、その先に見るのは地方文化の活性化だ。「日本各地を訪れる度に思うのが、日本にはさまざまな地域文化があること。地方の素晴らしい文化を元気づけ、守り続ける一助になれたらと思うんです」。生産者、お客様、メゾンカカオ、それに地方文化を加えた「四方よし」の旅はこれからも続いていく。

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