
世界的にも名高い果実大国、日本。
豊かな自然と美しい水、生産者の丁寧な手仕事から、四季折々のみずみずしい果実が生まれている。
その中でも、国産ネクタリンは市場で目にする機会の少ない希少な果実だ。
酸っぱくて硬い。そんな印象を持つ人も少なくないかもしれない。
けれど、本来のネクタリンは、華やかな香りと濃厚な甘さ、爽やかな酸味が重なる魅力あふれる果実だった。
その可能性を半世紀以上信じ続けてきたのが、山梨県の丹沢さん。
アロマ生チョコレート「STORY」に込めた希少な国産ネクタリン「黎明」は、どのように生まれたのか。
山梨を訪れた。

ネクタリンを、もう一度。
農園は、風が気持ちよく通り抜ける丘の上にあった。
ゆったりと間隔を空けて植えられたネクタリンの木々。
見上げると、赤く色づいた果実が緑の葉の間から顔をのぞかせている。
「古い木だと、一本で1300個くらい実るんですよ。」
木を見上げながら丹沢さんが教えてくれた。
日本でいち早く国産ネクタリンづくりに挑戦し、その可能性を追い続けて55年以上。
ネクタリンについて尋ねると、次から次へと話が広がっていく。
品種の歴史、遺伝、海外で食べた果実、土や葉の状態、そして収穫を待つ一本一本の木。
一つの質問に、いくつもの物語が返ってくる。
丹沢さんにとってネクタリンは、単に育てている果実ではない。
長い年月をかけて解き続けてきた、尽きることのない研究対象なのだ。

酸っぱくて硬い、という記憶
海外では、ピーチといえばネクタリンを指すことも多い。
皮ごと食べられ、香り高く、甘さだけでなく酸味にも奥行きがある果実だ。
ところが日本では、栽培の難しさから十分に熟す前に収穫されることも多く、「酸っぱくて硬い果物」という印象が広まってしまった。
やがて栽培をやめる生産者も増え、山梨からも姿を消しかけたという。
それでも丹沢さんは諦めなかった。
海外で出会った、濃く甘いネクタリン。
「あの美味しさを、日本でも。」
その想いを胸に、品種を選び、育種を重ね、栽培方法を磨き続けてきた。
今では糖度20度を超えるネクタリンも実る。
かつてのイメージとは、まったく違う味わいだ。

果実を生む、研究者の眼差し
丹沢さんは、栽培だけでなく品種選定や育種にも長く携わってきた。
遺伝を調べ、品種の歴史をたどり、新しい可能性を探す姿は、まるで研究者そのものだ。
「どれだけ調べても、親を超えるのは難しいんですよ。人間と一緒かもしれないね。」
そう笑いながらも、新しい挑戦をやめることはない。
その中で生まれたのが、「カヨヒメ」。
「最近、商標が取れたんですよ。」嬉しそうに登録証を見せてくださる。
名前の由来は奥さま。
「なんだか恥ずかしい。名前負けしちゃって。」
そう照れ笑いする姿に、みんなの笑顔がこぼれた。
「これは明日が採り頃だね。」
二人で木を見上げ、色づきや果実の張りを確かめる。
その何気ない会話からも、長年一緒に木を見続けてきた時間が伝わってきた。

美味しさを、果実へ。
「収穫時期に合わせて、葉の動きが止まるように育てるんです。」
丹沢さんが木を見ながら教えてくれた。
葉でつくった養分を、どれだけ果実へ届けられるか。
その積み重ねが、美味しさになる。
けれど自然は思い通りにはならない。
風も、雨も、おてんとさんにも勝てない。
「50年以上やってるけど、まだまだ全然わからないですね。」
そう言って笑う丹沢さん。
その言葉には、諦めではなく、まだ見ぬ美味しさへの期待が込められているようだった。

STORY
最後にいただいたのは、丹沢さんの自信作「黎明」。
ひと口食べた瞬間、濃厚な甘さが広がり、そのあとを華やかな香りと爽やかな酸味が追いかける。
「甘いでしょう。糖度20度あるんですよ。」
今年のアロマ生チョコレート「STORY」。
そこに込めたのは、香り高く、濃厚な甘さと爽やかな酸味が共存する、希少な国産ネクタリン「黎明」です。
一つの国から渡った品種。
半世紀以上積み重ねられた挑戦。
そして、多くの人の想いが重なって生まれた、一つの果実。
その繊細な香りをひらくように、チョコレートを重ねました。
一粒のチョコレートの先にある物語まで、ぜひ味わっていただけたら嬉しいです。
