にこやかでやわらかな口調ながら、言葉の節々から熱意があふれる。お客様へ製品を手渡す顔には満面の笑みだ。「メゾンカカオ」の姉妹ブランド「カカオハナレ」のプレゼンターだ。「メゾンカカオ」では、接客して製品を販売する職種を販売員ではなく「プレゼンター」と呼ぶ。「コロンビアでカカオを育てている生産者や国内のフルーツ農家の方々が時間と情熱をかけて作られたものが、リレーのバトンをつなぐように届けられてくる。最終アンカーとしてお客様に最後にお渡しするのがプレゼンターの役割です」。
製品が完成するまでにかかわってきた人たちの思いを、いかに自分の言葉を通してお客様に伝えるか。そのためには製品への深い知識はもとより、自分自身のブランドへの強い思いも不可欠だ。「ただ、おいしさを伝えるだけではなくて、『メゾンカカオ』の成り立ちや未来もお伝えして、お客様にファンになっていただきたい。やりがいではありますが、一番難しいポイントでもありますね」
学生時代から服が好きだった彼女は、ファッションの専門学校を卒業後、アパレル会社へ就職。7年にわたりデザイナーとして働いてきたが、「本当に自分がやりたいことなの か」と自問するようになった。「服だけにこだわらずに、自分が心から『いいな』と思うものや、好きなものを広めていくことにもっと注力したい」。転職を意識していた折に、 「メゾンカカオ」の求人を目にした。鎌倉に暮らす彼女にとって近所にある「メゾンカカオ」は身近な存在だった。
「初めて食べた時、めちゃくちゃおいしくてびっくりしまし た。そして、驚いたのは、その接客の素晴らしさ。いろいろなことを伝えてもらって、とても気分がよくて、衝撃的でした」。その時の体験が、彼女を新しい道へ歩ませた。入社して1年半あまりの彼女だが、新規にオープンした大船店のマネージャーに抜擢。 「えっ!? 私にできるかな」と驚いたが、やってみようと前を向いた。「『メゾンカカオ』 は失敗を恐れずに挑戦してみようという意識をすごく大切にしてくれます。ワンチームとしてみんながつながって横の広がりで助け合うから、チャレンジし続けられるのだと思います」
マネージャーとしてはまだ手探りの状態だ。店の方向性の決定、スタッフがより前向きに働くためにはどうしたらいいか、お客様に店でどのような体験をしてもらうか、さまざまな課題に向き合っている。だが、入社前からの信念がブレることはない。「自分が本当に心から『いい』と思わないと、力を込められないので、少しでも『これはどうなんだろう』と思った時には、そこはクリアにして絶対に自信があるものとしてお届けしたい」。 マネージャーになって多忙な毎日だが、「メゾンカカオ」での日々は充実していると語 る。「人生が変わりましたね。先輩やアルバイトのスタッフも含めて、とてもいい人ばかりで、『そういう視点があるのか』と気づきがすごくある。
また『大人の夏休み』といって、年2回休暇をいただけて、『旅に出よう』とすすめられます。私は旅行とか好きなタイ プではなかったのですが、やはり実際に旅に出てみるとすごく楽しくて学びがあります。 働いている時以外の豊かさみたいなものが増えましたね」。以前は、休日は「寝ていたかゲームをしていた」と苦笑いする彼女。現在は社内の「部活」と称したゴルフやカラオケ、カレー大会(?)を仲間とともに楽しむことも。最近の休日のお気に入りは、近所の海へ散歩に行き、ビール片手に息抜きをすることだ。砂浜を歩く、その足取りは実に軽やかだ。
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