鎌倉・御成通りに面した「チョコレートバンク」。「メゾンカカオ」の姉妹ブランドで、店内のカフェではこだわりのチョコレートと旬の素材を生かしたメニューが楽しめるとあって、いつもにぎわっている。ショコラティエは、ガラス張りのオープンキッチンの中から、時折忙しく動かす手を止めて店内を見回す。「おいしい」というお客様の笑顔にうなずき、再びチョコレートと向き合う。「僕は『チョコレートバンク』の製造の責任者で『カカオハナレ』と『メゾンカカオ』のファクトリーも担当しています。主な仕事は製品開発やメニューへの落とし込みです。またスタッフの状況をチェックしたり、どれだけ製造するか計画を立てたりと管理的な仕事もしています」。
ショコラティエは生産者が情熱と時間をかけて育て上げたカカオやフルーツを、チョコレートやスイーツに昇華させる。お客様の舌に響くか否か。「メゾンカカオ」の要の職といってもいいだろう。「自分が作ったものが、多くのお客さんに楽しんでもらえるのがうれしいですね。目の前でそれがわかるのは、すごくやりがいに感じます」
親が料理人だったことから食の道を志したショコラティエ。専門学校を卒業後、個人経営の洋菓子店でパティシエとして働くように。だが、経験を重ねていくうちに、自分の仕事に不満を持つようになっていった。「決められたレシピで菓子作りをしていくことに、物足りなくなったんです。自分で新しいメニューを生み出したいと強く思うようになりました」。パティシエとしての高みをめざしている時に出合ったのが、「メゾンカカオ」だった。「チャレンジしやすい社風」が創造性とハングリー精神にフィットした。入社して5年、パティシエの経験を生かしてチョコレートに特化したショコラティエとして、その腕に磨きをかけた。
現在抱いている夢は、ブランドのシグニチャーとなる製品を生み出すことだ。「世の中にあふれているものは、多くがありきたりなものだと思います。枠を超えて世の中にないものを作っていきたいですね。『メゾンカカオ』は『文化をつくる100年ブランドをめざす』と掲げています。ですから、僕も100年愛される製品を開発したいと思っています」。
100年愛されるシグニチャーを作る——この夢を叶えることが簡単ではないことは、身をもって痛感している。「難しいですね。やはり思った通りに作れない……」。だが壁にぶつかっても下を向くことはない。趣味のサーフィンや夏休みの旅のオフタイムが、仕事にいい刺激を与えてくれるのだ。「『楽しむ』ということが一番大事だなと思っています。自分が楽しくないと、何事もやり続けていくことが難しいですから」。「『メゾンカカオ』に入社して、仕事もプライベートも全力で楽しめるようになりました」と語る。
「本当に人生が変わりました。個人店で働いている時は給料もギリギリみたいな感じだったので、旅にも行く余裕もありませんでした。人とかかわれる範囲も狭いものでした」。シグニチャーをめざして、今日もまたチョコレートと向き合う。「チョコレートを通して、仲間やみんなの人生を豊かにしたいですね」。きっと100年後もショコラティエの手がけたシグニチャーから、人々の笑顔が生まれていることだろう。
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